遺言のQ&A
ここでは、多くの家庭でおこりやすいこと、遺言を活用した方が上手くいくこと、特殊な事例などを、Q&A方式で示しています。
はじめに・・・遺言でできること(10項目)
①子供の認知、②遺贈、③相続の廃除とその取り消し、④後見人の指定(相続人が未成年であるとき)、⑤相続分の指定・委託の指定、⑥遺産分割の禁止(5年以内)、⑦遺産分割方法の指定・指定の委託、⑧遺言執行者の指定・指定の委託、⑨相続人の相互の担保責任の指定、⑩遺言減殺方法の指定(遺留分減殺請求の際、その減殺指定)
Q1.揉めやすいケース①とは?
A1.もっとも多いのは、相続人が「配偶者(亡くなった方の配偶者)と兄弟姉妹(亡くなった方の)」のパターンです。つまり、「配偶者がいて、子供なし」パターンです。疎遠の関係性の中で、財産分与するの多いので、まずモメやすいです。法定相続だと、兄弟姉妹に権利が発生します。遺言で、財産は妻(夫)に相続させると残すと、法的に兄弟姉妹は口をだせないので(遺留分は発生しない)トラブルは防げます。
遺留分とは・・・法定相続人に最低限保障される遺産取得分のこと。
認められるのは、配偶者、子ども・孫(直系卑属)、両親・祖父母(直系尊属)です。
兄弟姉妹には認められていません。
Q2.揉めやすいケース②とは?
A2.財産の大半が自宅の場合や、自宅に同居の子と(遠方に)別居の子がいる場合です。つまり、親の世話をしていると感じる側(同居の子)、親の世話になっている(別居の子)と感じる側がいる場合です。実際はさておき、相続は感情のしこりが原因で揉めます。子の財産状況、親への支援状況、自宅の資産価値にもよりますが…。この場合、遺言で財産分与を指定して、付言で理由をつけておきましょう。
Q3.揉めやすいケース③とは?
A3.親の土地に子供が家が建っている場合(かつ相続人(子)が複数いる場合)です。田舎あるあるです。よくある夫の親の土地に、家をたて、親が亡くなり、相続人(子)が複数いる場合です。夫(妻)の兄弟姉妹との関係性によりますがまず揉めます。
また、先に亡くなるのは一般的に夫なので、残された妻は夫の兄弟姉妹からすれば他人です。この場合、やはり、遺言でその土地を家の所有者に相続させる旨の記載を残しておきましょう。生前贈与も一つの方法です。
Q4.遺言を活用したいケース①(相続人以外の世話になった方への財産分与)とは?
A4.人はひとりでは老いて生きるとはできません。だれかの助けが必要です。親の介護を実子の配偶者や子が行っている場合があります。よくある夫が働き、妻がパート等(その逆もあります)、介護をパート等の方が行う場合です。実子なら財産の相続権がありますが、実子でない場合、権利はありません(法定相続では財産分与はない)。現在、特別寄与も認められますが、現実は遺産分割協議では難しいでしょう。実子の配偶者に介護で世話を受けて感謝をしている場合、遺言で財産分与を検討するはいかがでしょうか。付言で感謝の意を残すのも、有効ですね。
Q5.遺言を活用したいケース②(再婚した場合)とは?
A5.再婚して、相手に連れ子がいる場合です。結婚した時期にもよりますが、こども(の実親)との関係性もあり、あえて、養子にしない場合があります。その場合、相続権がありません。遺言を活用して財産分与を検討するのも、有効ではないでしょうか。
Q6.遺言を活用したいケース③(パートナーがいる場合)とは?
A6.事実婚、内縁、パートナー等、たくさんの呼び名があります。相続で考えると籍を入れていない場合、相続権はありません。現在社会では複雑で、かえって籍を入れない方がスムーズに生活できる場合も見受けられます。その場合、遺言を活用して、財産分与を検討してもいいかと思います。ただし、相続人がいる場合、遺留分を検討してください。
Q7.遺言を活用したいケース④(子や孫にお金の使い方が異なる場合)とは?
A7.親、子供が3人(A、B、C)のケースをみてみましょう。Aは地方(親元)から東京の私大を卒業して、費用は親がだしていたとしましょう。B、CはAのおかげで経済的理由から東京等に進学できずに、地方で過ごしました。法定相続では原則、そのような理由は考慮されません。しかし、親は子にかけた経済的支援は一番わかっています。この場合、遺言によって、そのことを考慮した財産分与を検討しましょう。そして、そのことを付言によって理由をつけて残すしましょう。親の配慮に感謝するとともに、子の感情のしこりも和らぐでしょう。相続は最終的に納得してもらうことが大事です。
Q8.遺言執行者は必要ですか?
A8.遺言の内容を実現するために必要な場合が多く、特に相続人間でのトラブルを避けるために指定することが推奨されます。とはいうものの、必要ない場合も多くあります。遺言執行者は多くの場合、専門家(弁護士、司法書士、行政書士等)になります。
また、遺言執行者しかできない法的な行為があります。例えば、遺言による認知、推定相続人の廃除等です。この場合、遺言執行者を指定する必要があります。
例①遺言による認知・・・遺言執行者は就任から10日以内に認知の届け出をしなければなりません。認知する子供が成人している場合は本人の承諾書が必要。
例②推定相続人の廃除・・・遺言による廃除は、裁判所に申し立てが必要。廃除された相続人は財産分与(遺留分も含む)が受けられない。ただし、廃除には被相続人に対する著しい非行が認められなければなりません。
ちなみに遺言で指定されていても、執行者が辞退する場合があります。その場合、新たに家庭裁判所に申し立てをして、遺言執行者を選任してもらいます(申し立ての中で、候補者の推薦もできます)。
遺言執行者に親族が指名されていても、複雑な場合は、専門家が遺言執行者から業務委託契約を結び、対応するケースが多いようです。
Q9.自筆証書遺言の保管が心配です・・・
A9.亡くなった後、自筆遺言が見つからないケースも多々あります。現在、令和2年にはじまった「自筆証書遺言書保管制度」があります。これは、法務局に申請して、預かってもらえ、相続が起きたら相続人に通知してもらうこともできます。手数料は遺言書1通につき、3900円です。原本なら50年間保管されます。注意点があり、遺言の形式はチェックしてくれますが、中身のチェックまではしてくれません。その部分は、お金をかけて専門家に相談した方が良いと思います。下記に簡単にまとめましたので、参考にしてください。
自筆証書遺言書保管制度メリット
・家庭裁判所での検認の省略(たぶん、これが一番大きいメリット)
・遺言書の紛失の心配がない
・データ保管もされており、相続開始後、相続人は閲覧できる(相続人が閲覧したら、他の相続人に通知がいく)
・遺言者の死亡を確認すると、指定した人に通知をしてくれる(1通につき1人のみ)
※保管申請の際、法務局(遺言者の所在地、本籍地等)の予約が必要
Q10.遺言を書きたいけど、財産をすべて把握できてないのですが。
A10.実際は、そんなことはなく、大まかに把握していれば遺言書を書くことができます。預金や不動産を大まかに把握してください。ただし、財産は変化しますので、年1回程度は見直した方が良いですね。
Q11.遺産分割協議の際、不動産やお墓の管理でもめやすいと聞いたのですが・・・
A11.その通りです。不動産(家・土地)は簡単に売却できない場合もあります。場所によっては、資産価値がまったくない場合もあります。コンパクトシティー化がすすみ、ますますそうなるでしょう。また、お墓や納骨堂の管理もあります。地方により、風習や宗派も異なるので、負担は一概に言えません。ただ、相続人間で、お金がほしいとかそれぞれ事情はあるでしょう。そんなときこそ、遺言を活用してください。お墓の管理をお願いするから、お金を少し多く渡す等、負担をする人に財産を多く残すのです。遺言の付言を活用して、理由・感謝を残しておきましょう。相続人間の「納得」が大事です。
Q12.市役所等での無料相談で、遺言の相談はできますか?
A12.無料相談を活用するのもひとつの手です。しかし、多くは30分間との時間制限があります。また、相談した人(専門家)が遺言に詳しいかは運次第です。有資格者の無料相談となっているのではないでしょうか。多くの専門家はその場で文言、一言一句をチェックする時間がありません。概要やポイントをしぼって、相談しましょう。一般的に、専門家は文言のチェックに時間をかけてしていきます。そもそも相談しにくるのです。特殊な事例もたくさんあります。私も、特殊な事例は、法律の確認、専門書での確認、公正役場等に確認をしています。
Q13.不倫相手への死因遺贈の遺言は有効ですか?
Q13.原則、最高裁では、公序良俗違反について、遺言の無効かどうかは、遺贈の時期、遺贈額、女性との交際状況、夫婦の関係性など、諸事情を総合考慮して判断しています。つまり、ケースバイケースです。
Q14.認知症と思われる時に書いた遺言は有効ですか?
A14.遺言能力の有無については、難しいところです。最終的には、総合考慮して裁判所の判断となります。遺言者の年齢、病状を含めた心身の状態と推移、遺言の内容等、様々な要因があるようです。ある弁護士の話だと、財産額が大きい場合は、その当時の医師の診断書はもちろん、遺言時の様子を画像に写し、公正証書遺言を作成したようでした。
ちなみに、公証人から、裁判での証言を拒否されることもあります…。
Q15.尊厳死宣言をしたいのですが・・・。
A15.尊厳死宣言公正証書を活用ください。終末期医療については、治る病気を増えていますが。これも、感情の問題があるので、子ども等にしっかり話をしておきましょう。私製文書だと、信用度・信頼度が劣り、医師や医療機関の確認が困難であるため、従ってもらえない可能性があります。
Q16.相続人がいないため、死後は自分の望む通りにしたいのですが・・・
A16.いわゆるおひとり様の死後対策です。死後事務委任契約を活用ください。一般的に、遺言や任意後見契約と一緒に帰結されることが多いです。通夜・葬儀・納骨等、供養・年忌法要、老人ホーム等の施設の支払、契約内容は多岐にわたります。これも、必ず、親族に一言いっておいてください。いきなり、他人が出てきて、葬式の段取りをされても、びっくりされるでしょう。実際は、墓じまい(お墓の解体・閉眼法要・離檀料等:百万円くらい相場はそれぞれ)や改墓(お墓のひっこし:数百万円かかる場合もあり)も検討するといいかもしれません。だれもいない場合、市町村は本当に最低限のことしか行いません。火葬だけとか…。
Q17.死因贈与契約がある聞いたんですが・・・
A17.遺言で行ったり、生前契約で行います。相続人以外に、これをすると、中身と受贈者によっては相続人と揉めます。裁判になる確率も高いです。不動産については、仮登記もすることができます。しっかり理由を説明して、相続人にも話だけはしておきましょう。
付言・・・遺言の中で遺言書において遺言者の気持ちや相続人に伝えたいことを記すこと。法的な効力はないが、親族間の揉め事を減らすことに有効。